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ILO中途採用者の賞与・昇給の引下げは求人票に「賞与年4ヶ月分,昇給6%」との記載がなされていた中途採用者の事案について,「賞与や昇給については,事業の業績や物価の動向等の経済情勢の変動等の未確定要素に大きく左右されるものであることは明らかであるから,求人カードに記載された条件を労働契約の内容とすることが直ちに契約当事者の意思に合致するものとはいえず,労働契約締結前後の事情をも考慮してこれを決するのが相当である。」(A土木施行監理事務所事件・東京地判昭62.3.27労判495号16頁)とする裁判例がありますが,この場合には,労働契約締結時に変更する意思表示が企業より示されなければ賞与や昇給の内容として確定するというように考えることが妥当だと思います。
賃金の場合については,たしかに裁判例が判示するように毎年4月頃のベースアップに左右される労働事情にあるにもかかわらず,それが始期付解約権留保付労働契約が成立した約6ヶ月前に確定しなければならないというのは無理であり,しかもその他社会的経済状況も6ヶ月の間に大きな変化を示すことを考え合わせれば,考慮される合理性がそこにあることも事実ですが,賞与や昇給を支給するか否かは入社してからの就業規則上の問題であり,入社前にその経済情勢等と考慮する性質のものではなく,就業規則にその支給規定があってはじめて社員に請求権が生じることになる性質のものですから,条件なく支給するというのか,支給することがあるというのか,事業の業績や物価の動向等の経済情勢の変更等を総合的に勘案して支給するというのか,その賞与や昇給の請求権の性質によって入社後に具体的に判断をすればよい問題であると思われます。
求人票記載の勤務地や勤務場所の変更は業務内容や勤務場所は,必ず明示すべき労働条件の1つであり(労基則5条1項1号),大切な労働条件ですが,わが国の労働契約は白紙委任の包括的労働契約の締結が一般的であり,通常は従事すべき業務,勤務場所の決定・変更権限を委ねて企業に入社してくるのであって,企業の就業規則には,「企業は業務上の必要により,社員に対して配転・転勤を命ずることがある。
この場合,社員は正当な理由なくこれを拒否してはならない」旨の配置転換規定が設けられている実′情からすれば,求人票への業務内容や勤務場所の記載について,労働契約締結時に特定の合意があったものとして,求人票記載の業務内容や勤務場所が労働契約内容として確定したとすることは,多くの場合は無理のように思われます。
ただ就業規則に,配転や転勤命令に関する包括的な規定が設けられておらず,実際に配転や転勤が行われていないという実情にあれば求人票記載の業務内容や勤務場所で労働契約内容を確定したものと評価されることになるでしょう。
この点について,裁判例は,求人票に職種「テレビ製造関連業」,勤務地「川崎工場」と記載されていた事案について「右記載は雇用当初における予定の職種,勤務場所を一応示すにとどまるのであって,将来の職種,勤務場所を右記載のとおり限定する趣旨のものとみることは困難である」(Nc事件・東京地判昭50.5.7労判228号52頁)と判示しています。
また行政解釈においても「具体的かつ詳細に明示すること。
但し,将来従事せしめるべき業務を網羅的に明示することは差し支えないこと」(昭22.9.13発基17号)とし,弾力的に取り扱われています。
1 試用期間とは試用期間はなんのための期間多くの企業の就業規則には,「新たに採用した社員については,入社の日より6ヶ月を試用期間とし,この期間中の勤務成績,職場態度,業務能率,健康状態その他により社員として不適格と認めたときは,採用せず解雇する。」旨の規定が設けられています。
このように社員を採用するにあたって,はじめから正式の本採用とせず試験的な試みの勤務期間のことを試用期間とよんでいます。
そして,このような試用期間については,最高裁判例において「新規採用にあたり,採否決定の当初においては,その者の資質,性格,能力その他の適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行ない,適切な判定資料を十分に蒐集することができないため,後日における調査観察に基づく最終決定を留保する趣旨でされるものであって,今日における雇傭の実情にかんがみるときは,一定の合理的期間の限定の下にその効力を肯定することができるというべきである。」(Mb樹脂事件・最大判昭48.12.12民集27巻11号1536頁)と判示され正社員としての適格性判定期間であると理解されているとともに,一般に見習期間としての基礎的教育訓練期間であることが認められています。
I試用期間=(正社員適格判定期間)+(教育訓練期間)試用期間にはこのように「正社員適格判定期間」であるとともに「教育訓練期間」であるという2つの性格を有する期間として理解されていますが,今日では,正社員適格判定期間としての試験的な観察期間としての性格は薄れているのが実情であり,むしろ見習期間としての基礎的教育訓練期間としての性格の方が強くなっています。
(a試用期間の性質は試用期間がどんな性質を有する期間であるかについては,その法律構成において争いがありましたが,わが国の労働契約は白紙委任的な包括労働契約であり,長期的な視野に立って総合的に教育訓練を行いキャリアの形成を保障することに鑑み,その実態からすれば入社時より本格的に定年まで前提とした労働契約関係に入っているものとして,基本的には本採用の労働契約と同一の契約を有する性質のものとして理解し,定年までの雇用を保障することがためらわれる場合については,これを例外的に企業外へ排除することができるというような,解約権留保付の本採用労働契約として位置づける考え方が支配的でした。
この点について,前掲・Mb樹脂事件最高裁判例は,「当該企業内において試用契約の下に雇用された者に対する処置の実情,とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行」などを考慮して各企業ごとの実情に応じて個別に試用期間の法的性質は判断されるべきものであるとしながら,「新規採用者を試用期間終了後に本採用しなかった事例はなく,雇入れについて別段契約書の作成をすることもなく,ただ,本採用にあたり当人の氏名,職名,配置部署を記載した辞令を交付するにとどめていた等の実態」がある場合には,試用期間は「試用期間中に不適格であると認めたときは解約できる旨の特約上の解約権が留保されている」「解約権留保付の雇傭契約」という法的性質を有するものであり,「本採用拒否は留保解約権の行使,すなわち雇入後における解雇にあたる」旨の判示をしています。
したがって,試用期間満了後にあらためて二次試験のごときものを実施して,正式に定年までの雇用を保障する本採用を決定するといった場合でない限り,試用期間中に社員として不適格であると認められる事由があった場合には本採用を拒否することを留保した本採用契約であるということになります。
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